司法書士の仕事をしていると、他の資格にかかわる仕事についての相談を受けることがあります。特に多いのが税金のことや、建物を壊したけどどうすればいいかというようなことです。
そんな時、ほかにも資格を持っていると簡単に答えることができてお客さんも満足してくれます。
実は、わたくしタケさんは司法書士に合格する前に土地家屋調査士の仕事をしていました。一番最初に取った資格が土地家屋調査士なので、かなり愛着があります。
でも土地家屋調査士はとてもマイナーな資格で、どんな仕事しているかを知っている人も少ないんですよね。
それに、毎年の試験受験者の数もだんだん減ってきていて、ますますマイナーな資格となっています。
しかし土地家屋調査士の仕事はおもしろいですし、若い人が少ない業界ですからとてもオススメの資格なんですよね。
以前に「司法書士と行政書士のダブルライセンスあると良いことあるよ」という記事を書きました。
【ダブルライセンス】司法書士と合わせて行政書士の資格も取ると良いことあるよということを実際の合格者がお伝えします本記事では、「司法書士が土地家屋調査士の資格を取ってダブルライセンスになるともっと良いことあるよ」ということや「土地家屋調査士の仕事や試験対策」についてもお伝えしたいと思います。
司法書士と土地家屋調査士があれば登記のスペシャリストになれますよ。
もくじ
土地家屋調査士は司法書士と関連がある資格
土地家屋調査士と聞いてどんな仕事をしているかすぐに分かる人は資格マニアです。
一生に一度でも土地家屋調査士に会う機会はないかもしれません。
土地家屋調査士は登記の仕事をする人です。土地や建物を調査及び測量して、不動産登記の申請をして登記することが主な仕事です。
司法書士も登記の仕事ですが、役割りが違います。司法書士は測量しませんからね。
すこし表現が難しくなってしまいますが、
- 土地家屋調査士→土地や建物の物理的現況に関する登記
- 司法書士→所有権などの目に見えない権利に関する登記
となります。不動産の登記に関する仕事をするということで共通しています。
土地家屋調査士の仕事ってどんな感じなの?
土地家屋調査士の仕事は、肉体労働と知的労働が半分ずつくらいです。どんな仕事をするのかを少しご紹介しましょう。
土地家屋調査士の仕事は登記です。土地と建物の登記がありますが、いちばん割りのいい仕事は建物の新築登記です。
ハウスメーカーや建築工務店から仕事をもらうのですが、はっきり言ってラクな仕事です。
建物が完成する前に現場に行って、建物が登記できる基準を満たしているかを確認します。
建築図面の通りに建築されているか、建物の周りの距離を測っていきます。測るといっても測量器具ではなく、巻き尺などで大体の距離がわかればオーケーです。あとは建物の外装や内装の写真を撮っておきます。
そして事務所に帰って図面の作成をしますが、図面はパソコンソフトがありますから難しくありません。申請書を作成して終わりです。
誤解を恐れずに言いましょう。
建物の新築登記はめちゃくちゃ簡単です。できれば建物新築の登記だけの仕事をいっぱいもらいたいなぁなんて思ったりします。
でも建物新築の登記はみんなやりたい仕事なので参入が難しいんですよね。
多くの土地家屋調査士事務所は土地の測量をします。
- 自分が持っている土地に新しく家を建てたい
- 土地を売りたい
という場合には土地を測量して面積を正確に測り、「境界」をはっきりさせる必要があります。
その測量を行う過程で、土地の境界を確認するために隣接地の所有者と立ち合いをしなければなりません。
「測量した結果、わたしの土地とあなたの土地の境界はココみたいですけど、ココでいいですか?」という確認をします。そしてお互いに境界を確認しましたという書面に署名と実印を押して、それぞれがその書面を保有するという流れになります。
この境界確認が土地家屋調査士としてイチバン大変な仕事になります。なぜならみんないい人ばかりではないからです。
- なぜか最初からケンカ腰の人
- お金を要求する人
- 反社会的勢力のような人
- 遠方に住んでいてなかなか連絡が取れない人
などなど、境界確認をするたびにドラマがあります。一筋縄ではいきません。でもそれだけに、すべての隣接地所有者からハンコをもらえた時は大きな達成感を味わえます。
さてさて、無事に境界が決まってもそれで終わりではありません。まだやるべきことが残っています。
杭打ちの刑です。
わたしはかつてそう呼んでいました。決して杭にはりつけにされるわけではありませんが刑罰のような作業です。
境界を決めたらその決めた場所に杭を埋設しなければなりません。
ちなみに境界杭はコンクリートでできていて、こんなやつです。
はい、メチャクチャ重たいです。長さも重さもいろいろありますが、いちばん小さいものでも重たいです。何が大変かっていうと正確な場所にこれを設置するのが難しいんですよね。もはや職人芸です。
そして、真夏の猛暑に日陰もないような場所での杭打ち作業はまさに地獄。ひとつの現場で10本以上の杭を設置することもあります。体力に自信がないとできません。
今では見る影もないですが、土地家屋調査士事務所で働いていたときはバッキバキの身体してましたよ。
司法書士が土地家屋調査士の資格を取るメリット
これまでの説明を見て「土地家屋調査士って大変な仕事じゃん」と感じた方もおられるかもしれません。
だから言ったじゃないですか、「ラクなのは建物新築の登記だけです」と。
でも司法書士が土地家屋調査士の資格を取ると登記の仕事の幅が広がるんです。
例えば、
- 建物滅失登記→建物を取り壊したときにする登記
- 土地の地目変更登記→土地の使用用途を変えたときにする登記
- 建物の表題登記→建物を新築したり増築したり一部を取り壊したときにする登記
ほんの一部ですが、土地家屋調査士はこれらの登記の仕事ができます。
司法書士の仕事をしているとけっこう土地家屋調査士の分野の相談をされることがあります。わたしは登録してないのであくまでも一般論としてしか答えられません(受任できませんので)が、知識を得ておくと何かと重宝します。
もちろん資格を取って登録すれば土地家屋調査士の仕事もすることができますので、それだけ収入も増えるでしょう。
司法書士と土地家屋調査士の両方登録すれば登記のスペシャリストであることをアピールできますね。
司法書士が土地家屋調査士試験に合格するためには
土地家屋調査士試験は午前の部と午後の部に分かれています。
- 午前の部 測量に関する問題(作図も含まれます)
- 午後の部 択一式(20問)不動産登記法・民法・土地家屋調査士法/記述式(土地・建物)
測量士補を取ることによって、上記の午前の部の試験が免除となります。
午前の部の免除は必ず受けてください。測量士補を取らないで土地家屋調査士試験を合格することは極めて難しいと思います。
あきらかに測量士補を取るほうが負担が軽いです。
測量士補試験の難易度は高くありません。若干計算問題がありますが、高度な計算ではありません。過去問を繰り返し解いていれば大丈夫です。過去問レベルの問題が繰り返し出題されているからです。一発で合格しましょう。
なお、測量士補試験は例年5月の日曜日に行われます。日程については下記の国土交通省国土地理院のホームページで確認してください。
土地家屋調査士試験の民法は3問出題されますが、司法書士であれば何の問題もありません。勉強しなくてもダイジョウブ。
一例としてどんな問題が出題されるかを見てみましょう(クリックすると問題が見られます)。
平成30年度試験 第1問
第1問 行為能力に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記1か ら5までのうち,どれか。
ア 未成年後見人が選任されている未成年者については,後見開始の審判をして成年後見人を付することができない。
イ 成年被後見人が日用品を買い受けた場合には,その売主が買主について後見が開始していることを知らなかったときであっても,買主の成年後見人は,当該日用品の売 買契約を取り消すことができる。
ウ 被保佐人に十分な判断能力がある場合には,被保佐人と契約を締結しようとする者は,家庭裁判所に対し,利害関係人として,保佐開始の審判の取消しを請求すること ができる。
エ 被保佐人は,保証契約を締結する前にその行為をすることについて保佐人の同意を得たとしても,自己の判断でその保証契約の締結をやめることができる。
オ 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには,本人の同意が必要である。
1 アウ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 エオ
わたくしの解法を記します。
問題文をざっと見て「オ」の肢が絶対に正しいことが瞬時にわかります。そうすると答えは2か5のどちらかです。「ア」の肢を見ると誤りっぽいと思いますが、あまり自信がありません。それで「エ」の肢を見て考えます。
『保佐人の同意というのは被保佐人の利益のためにある制度だから、たとえ保佐人の同意を得たからといって被保佐人がやめたいと思えば被保佐人の判断で契約しないこともできるはず。』
それで「ア」の肢が誤りっぽい解答であることを踏まえて「エ」が正しいということに自信がもてます。それで答えは5となります。
基本的な点を完璧にしておけば、あとは制度趣旨などを考えれば答えられます。あいまいな10の知識よりも完璧な1つの知識のほうが本番では必要になってきます。
司法書士試験と土地家屋調査士試験では不動産登記法が試験範囲となっています。しかし、不動産登記法の科目は全く別物と考えましょう。
つまり、司法書士試験の知識の財産だけでは合格できません。
それもそのはず、司法書士は権利に関する登記を行い、土地家屋調査士は表示に関する登記を行うからです。ですから土地家屋調査士試験では当然、表示に関する登記の問題がでます。全く別の分野です。
特に、敷地権の登記、建物合併、建物合体、区分建物、建物の種類、土地の地目などの土地家屋調査士特有の登記に関しては細かいところまで覚えることが必要なので苦戦するかもしれません。
区分建物は強敵ですよ。それに敷地権がからんでくるとややこしくなります。
土地家屋調査士試験の山場は何といっても「記述式」でしょう。特に土地の記述式は計算を早く正確に行うことができないと時間切れになってしまいます。
計算することに加えて図面を書かなければいけません。司法書士試験もそうですが、土地家屋調査士試験も時間との勝負です。
どのように計算していくかという「ひらめき力」を養うことと、図面を書くスピードをいかに速くするかは「訓練」していくしかありません。
わたしも一日1問ずつ記述式を解いて計算と作図に慣れるようにしました。
また、土地家屋調査士試験は計算機の使用が許可されていますが、計算機を使えなければ意味がありません。どのように計算機を駆使して座標を算出するかは自分なりの方法を見つけておきましょう。
土地家屋調査士試験の記述式の解法や計算機の使い方に関しては、予備校の講座を受けることによって近道をするという方法もあります。
土地家屋調査士の資格を取って業界を盛り上げましょう
わたしが一番最初にとった資格である土地家屋調査士。
大変な仕事でしたが楽しかったのも事実です。せっかく資格を取ったので、いつか司法書士だけでなく土地家屋調査士の登録もして(ついでに行政書士も)、登記のスペシャリストを目指したいと思います。
土地家屋調査士の登録者の高齢化、受験人数の減少など、あまり明るいニュースを聞くことがありませんが、若い人がどんどん参入することで土地家屋調査士の認知度がアップしてくれると嬉しいです。
何度も言いますが、土地家屋調査士おススメの資格ですよ!
タケさん(@takesanblog)でした。